art.19 せめておいしいものだけでも食べようかと思う

著者との対話

本とは不思議なものである。文字が書かれた紙の束。インクのシミと言っても間違いじゃない。でもそのシミを読み進めると極稀にだが不思議な経験をする。話したこともなければ、会ったこともない、むしろとうの昔にこの世界を去った人が僕の頭に入り込んでくるのである。

その人は語りかけてくる。あれやこれやと兎や角言う。こちらの質問は受け付けない。一方的に話す空気の読めない人である。

だけど不思議と嫌な気持ちはしない。むしろ話をもっと聴きたくなる。質問は受け付けないが、ふとした文脈で答えを言ってたりする。頼りになる。

こんな頼れる人が1000円程度で買える国に生まれた幸運に感謝しながら本を読む。おいしいものがさらにおいしくなるのである。

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