art.15 せめておいしいものだけでも食べようかと思う

歩きスマホ

ある賢者が若者に言った。

「そのスプーンに乗せた油を一滴もこぼしてはいけないよ。そのままこの建物を一周してここに戻って来ないさい。」

「戻ってきました。」

「さて、君はこの建物に何があったか見たかい?油をこぼさないようにするのに一生懸命で何も見ていない?そうか、それじゃあ今度は建物の中をきちんと見て回ってきなさい。」

「戻ってきました。」

「どうだった?」

「天井や壁画に飾られた全ての芸術品や、庭の木々や建物から見える美しく壮大な景色を味わうことができてとてもよかったです。」

「で、君に預けたスプーンの油はどこへやったのだ?」

「・・・すみません。外を見ることに夢中で油はどこかへ消えてしまいました。」

「君に幸福の秘密を教えてあげよう。それは、世界の素晴らしさを味わうと同時にスプーンの油も忘れないことだよ。」

街を歩けばみんな油に夢中。ほんの少し顔を上げるだけで世界の素晴らしさに気づけるのに。

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